(コラム42-3)見せると変わる

人を言葉で説得するのは難しい。

論より証拠。習慣を変えさせるのならば、証拠を見せる方が良い。

避難所の2枚の写真は、被災者支援の形が30年間変わっていないことを読者に示していた。トイレの小さなしみは、40年間の習慣を変えるのに十分な動機を私に与えた。アナリスト1年生が作ったシートは、先輩たちの意識を変える可能性があると私には思えた。

そのシートに書いてあるのは、両チームの体重と、ポジションごとの体重差のみ。ライバル校に比べて、大きな開きあることが一目で分かる。コンタクトスポーツであるラグビーに置いて、体重は強さの指標の一つであり、ここに大きな課題があることが分かる。

このシートにアナリストの主観は一切入っていないが、着眼点と数字を地道に拾った努力に、A君の主張が内包されていると言えるだろう。

とはいえ、すんなり受け入れられるかどうかは未知数だ。

あいつら(ライバル校)はもともと体重がある、とか。あいつらみたいな練習環境だったら、俺たちだって、とか。長年の習慣を変える前に、言い訳が出てくるのは人の性だ。

面談を終える前に、私はA君に、新たな提案をしてみた。選手たちの1年前の体重の記録があるはずだから、そちらとも比べてみよう。

A君の目に、さらなる光が宿ったように見えた。

体重がこの1年で大きく増えた選手がいれば、選手たちの競争意識を刺激して、モチベーションを高めることができる。

A君はしきりに頷いている。チームに良い影響を与えるイメージできたのだろう。

データや写真が示す事実は、物事の一面に過ぎない場合もある。

避難所の写真にしても、あの2枚の写真は一例だけであって、体育館以外の避難所もあるかもしれない(実際、あるようだ)。

他国の例と比較しても良い。同じく地震大国であるイタリアでは、早急にテントが設営されて、被災者たちのプライバシーが確保される。そして、専門のシェフが派遣され、温かい食事が用意されると聞く。その写真も併記されれば、さらに多くのことを伝えてくれる。

某大学とライバル校との体重差は大きいが、実は1年前よりは縮まっているかもしれない。そうであれば、チームに前向きなメッセージを送ることができる。

選手が率先して良い習慣を身につけるように仕向ける。アプローチは異なるが、コーチもアナリストも、これを目指している。そのためには、できるだけ客観的な事実を見せるとともに、明るい未来が見えるようにしたい。

A君はこの1年で大きく成長した。彼の未来もまた明るい。

参考資料:NHKウェブサイト

“快適な避難所”の迅速な開設を目指して イタリアと台湾に学ぶ

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