「トヨタ品質」を体現する2人のキッカー (トップリーグ2021 プレイオフトーナメント3回戦 トヨタvドコモ レビュー)

 プレイオフ準々決勝、トヨタヴェルブリッツ対NTTドコモレッドハリケーンズは、トヨタが3329の接戦を制した。

 リーグ戦で4勝3敗と勝ち越したドコモだが、得点力のあるチームではない。リーグ戦での平均トライ数3.116チーム中12番目である。この試合では、プレイスキックが好調なバンクスが10番で先発出場し、そのまま80分間プレイした。同じポジションで、リーグ戦で活躍した川向は、最後の2分しかグランドに立っていない。

 トーナメントは一発勝負。勝ち点を意識する必要は無いため、ペナルティゴールを重視することはよく見られる。また、プレイ中のキックも多くなるため、その精度が勝敗を左右する。本稿では、キックに関する3つのスタッツから、この試合を掘り下げていきたい。

スタッツ1トーナメントではキックが増える

(表1)

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   表1は、準々決勝1日目の2試合と、2019年のワールドカップのグループステージとトーナメントにおけるキック数である。

 常にキックが多いパナソニック以外は、概ね50%増である。トライを狙って自陣から攻めるのは、リスクがある。反則を犯せば、相手にペナルティゴールで3点を取られる。それなら、キックで陣地を取ろうという選択になる。

 この試合では、ドコモ15番マーシャルのハイボールと、9番ペレナラのボックスキックが目立っていた。どちらも再獲得を狙ったキックで、マーシャルのキックは10回のキックのうち3度再獲得に成功し、トライにもつながった。

スタッツ2 –転がすキックは、良いキック

(表2)

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   表2は、両チームのメインキッカーによるキックの結果である。トヨタはCronjeLe Roux2人。この試合、トヨタはPKも含めて30本蹴っているが、そのうち27本がこの2人である。この結果を見ると、ドコモでは3回あったOwn Player Collected(再獲得)は0である。

 他方、ドコモよりも多いのはCollected Bounceである。これは「バウンドして、相手が捕球した」を意味する。

 直接取らせずにバウンドさせる。これには高いキック技術が必要となる。狙ったところに落とすコントロールに加えて、相手の頭を越すだけの飛距離も求められる。Cronjeのキックは特にこれが多いのが特徴だ。

スタッツ3 –「がっかりキック」が少ないのは誰か

(表3

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   表3は、キックエラー率を示している。キックエラーには、チャージされたキックのほか、ダイレクトタッチや伸びすぎてインゴールを超えてしまったものが含まれる。スタジアムからため息が漏れてしまうような「がっかりキック」である。この試合では、バンクスが3回、マーシャルが1回、会場をがっかりさせた。一方のトヨタは0回だった。

 表3は、この試合以前に30回以上蹴った選手をキックエラー率の小さい順に並べている。その2位と4位にこのトヨタの2人がいる。パナソニック勢も3人入っているが、トヨタ勢よりもエラー率が高い。キックエラーには個人の技術以外の要因も考えられるが、トヨタの2人が安全性の高い「トヨタ品質」の持ち主だということは言えそうだ。

 トヨタの次の相手は、パナソニック。キックが多い相手だけに、ルルーの先発出場が予想される。彼らの質の高いキックに注目したい。

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