サッカーアナリストの庄司智氏にこんな話を聞いたことがある。ドイツのサッカー報道がデータを重視する理由についてだ。
「(あくまで個人的な意見ですが)過去の戦争に大きく起因しているのではないかと考えています。ドイツはメディアを通したプロパガンダの怖さについて敗戦から多くを学びました。戦時中、ナチスはプロパガンダを広める際に重要な手段として、書籍や新聞、ラジオ、映画といった新しいメディアを利用したからです。そのため、敗戦後のドイツのメディアは特に公共放送における公平性、つまりできるだけニュートラルに情報発信することを重要視し、物事を伝えるために数字(データ)を多用します」
https://book.mynavi.jp/macfan/detail_summary/id=72186
こうしたことを聞くと、たとえスポーツであっても、報道には根拠は必要であり、そうした姿勢が無ければ、競技の発展が阻害されかねない。
スポーツ報道にこうした根拠が曖昧な記事が登場するのは、データ不足が原因だろうか。観客数や過去の戦績などは公式記録ですぐに見つけられるが、「ボール球を見極めた回数」は出てこない。そこで過去の取材経験などから「きっとそうだろう」という内容を書くのではないか。
では、これをファクトチェックする方法はあるだろうか。
直接的なデータが無ければ、類推するしかない。野球についてはそれほど専門的な知識を持っているわけではないが、記事を読む限り、佐藤打者は開幕当初に比べ、4月15日の時点で選球眼が良くなっているのはずだ。そこで四球数が増えていれば、それが実証できる。
d Menu sportsというサイトに月別の個人成績が載っていた。
https://baseball.sports.smt.docomo.ne.jp/team/member/2000051/stats_02.html
3月には21打席あり、三振が11、四級は1だった。それぞれ52%と5%だ。4月は93打席あり、三振32、四球6。三振率は34%(18%減)、四球率は6.5%(1.5%増)。三振が減ったのは分かったが、四球率は大きな変化なし。ボール球を見極めているかどうかはわからない。
記事には「カウントを悪くしていた。そのため、失投も打ち損じるケースが目立った」とある。カウント別打率で調べてみた。
「悪いカウント」とはストライク先行のカウントだろう。0-2が.133、1-2が.194。2-2が.176であるから、これは言えるのかもしれない。
その一方で、0-1、1-1は.500である。1ストライク以内のカウントは、おしなべて平均以上だ。
出塁率を見ると3月.190、4月.312、5月.441と明らかに上昇している。やはりボール球を見極めて、ストラクを捉えているのが好調の原因なのかもしれない。
この程度のデータでも、推測は可能だ。こうすることで、より信憑性を高めることができるのではないか。