リーグナンバー1、圧倒的なサントリーの攻撃力
勝利と最も相関の強いスタッツは何か。それは単純に得点数であり、トライ数である。では、そのトライと相関が強いのは何か。
複数の研究論文が、ラインブレイクの数だと報告している。(The Science of Rugby p. 195. Taylor and Francis) 全てのトライの51%がラインブレイクから生まれ(Diedrick and van Rooyen) 、そのラインブレイクの82%はオフロードから生まれているという報告もある(Wheeler et al. 2010)。
準決勝第2試合で対戦する、サントリー、クボタの両チームをこの観点から比較すると、このようになる。
トライ、ラインブレイク、オフロード、いずれもサントリーがリーグ1位であり、クボタは回数ではいずれも半分程度。ランキングも5,6位にとどまる。
サントリーの平均9トライというのは、圧倒的な数字だ。2位は神戸の6.4、3位はパナソニックの6.3。6試合で中断となった2020年の神戸は7.8、その前年に優勝した時の神戸は6.9だったから、9トライというのは特出した数字と言える。
サントリーを2020年6試合と比較してみると、いずれの数字も大きく増加している。オフロードがラインブレイクを生み、ラインブレイクがトライを生む、という先の報告を実証しているかのようだ。
こうした数字だけに注目すると、サントリー有利が予想される。しかし、前回の対戦では33対26の接戦となった。トライ数は4本ずつ。サントリーの2トライは、クボタ10番フォーリーがシンビンにより数的優位となった前半残り10分間に奪ったものだ。後半はクボタに迫られるが、サントリーが辛くも逃げ切った。
(サントリーの個人別オフロード回数。30%強を占めるトップ2サム・ケレビとテビタ・リーが、この試合欠場となっている。その影響はどうでるか)
ラインアウトの攻防に注目
この試合で、クボタの4トライのうち3つがラインアウト起点だった。サントリーはリーグ戦で20トライを奪われているが、そのうち55%がこのラインアウトを起点としている。その一方、クボタは全トライの54%がラインアウト起点である(全チームの平均は41%)。どうやら、ここの攻防が試合のポイントの一つとなりそうだ。
クボタは自信を持って攻めてくる。一方、サントリーはその自信を崩したい。
冒頭で勝利につながるスタッツとして、ラインブレイクとオフロードを挙げたが、もう一つ別の数字をあげる報告もある。「相手ボールのラインアウトを奪った数」(Jones er al. 2004)だ。
相手が最も準備してきた攻撃の機会を奪うと同時に、サントリーが得意とするターンオーバーからのアタックを開始することができる。
クボタのフォワードには、205センチのボタ、199センチのブルブリングがいて、92%のラインアウト成功率はリーグ1位だ。(サントリーは90%で2位)
一方のサントリーも、197センチのサベッジと207センチのホッキングスが先発し、さらにリザーブに、200センチのジョー・ラタが控えている。
前回の対戦でのラインアウト成功率は、クボタ92%(12/13)に対して、サントリー86%(12/14)と、サントリーはプレッシャーを与えられなかった。ラインアウトを起点に奪われた3トライでは、サントリーは空中でプレッシャーをかけていない。ただし、試合終了直前、逆転のピンチの場面では、コンテスト(空中での競り合い)をした結果、クボタはモールを組めず、そのまま試合終了となった。
リーグ随一のアタック力を持つサントリーが、ディフェンスでクボタの強みをどのように消しにくるのかに注目したい。