「メモをとれば財産になる」
コラム66
私はよくメモを取る方だと思う。人に会う際にはとりあえず手帳を出す。以前は、案件ごとにノートを作っていた。そこに思いついたアイデアを書いていた。
それらを最近、読み返す機会があった。ほとんど覚えていないことばかりだった。メモしたこと自体を忘れていた。iPadにも書いていた。しかし、字が汚すぎて読み返せなかった。
メモの取り方に問題があるのか。それとも、覚えていないということは、内容に大した価値はなかったのか。いずれにしても、効果的なメモの取り方を学びたいと思い、この本を手に取った。
冒頭から意外なことが書かれている。この本が解説するメモ術「ツェッテルカステン」を身につけると、あなたは1冊の本が容易に書けるという。それほど多くの人が本を書きたいとは思っているのだろうか、と感じたが、私にとっては打ってつけの内容だ。私はこれまで3冊のノンフィクションを執筆をしているが、最後の本が2015年なので、いつの間にか10年が経ってしまった。
最初の本を出した時、1年に一冊は書く計画を立てていたが、全く計画通りにいっていない。本書によると、この「計画を立てる」ということが良くないらしい。これも意外だ。人間はそもそも計画を立てたり、期限を設けることが苦手なのだという。さらに驚くことに、読書の際に、下線を引くことは無意味だし、本を再読するのは時間の無駄と喝破する。もう読むのを止めようかと思った。長年自分がやってきた習慣ばかりだからだ。
私は毎日の計画を立てているし(その通りに行くことは全く無い)、本の中の覚えておきたい場所に下線を引く(その瞬間すべて忘れている)。そして、忘れるなら再読すれば良いと思っている(文学以外は、再読をしたことは記憶に無い)。
では、どうすれば良いのか。
下線を引くのではなく、メモをとる。それも自分の言葉でまとめる。そのメモは、過去のメモとどのように関連するかを考え、リンクさせながら保存する。手当たり次第にメモをするのではなく、仕組みを作ってその中で仕事をするのだ。
読み進めていくうちに、これはうまくいくかもしれないと感じた。ここ数年、自分のコーチングにおける課題は、過去の練習メニューを忘れてしまうことである。練習の記録は、すべてとってある。しかし、ただ記録しているだけですっかり忘れてしまっている。記録がどこにあるのか忘れてしまうと、お手上げになってしまう。
練習内容を単なる記録として扱っているだろう。それぞれのメニューがどう関連するのかを考えながらメモを保管し、同一テーマのストックを増やしていけば、それはプログラムになるだろう。
本書によると「情報を脳の中の文脈に結びつけることが大事」なのだ。私のメモや練習記録は、それぞれが単独の知識。これは詰め込み教育のようなもので、すぐに忘れるし、役に立たない。情報は過去と結びつけることで、記憶されるのだ。
本書自体が、そのメモ術を使って書かれたものである。本書は、同じような内容を別の言葉で繰り返している箇所があり、冗長な部分もある。しかし、読後にこれを取り入れようとしているのだから、その繰り返しが説得力を生んでいるのだろう。
ここまで、この本の内容を、自分の言葉で書いてみた。これなら忘れないはずだ。