7年ぶりに補聴器をつけてみて、3つの変化に驚いた

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(マスクに加え、花粉症対策のメガネ、日差しから坊主頭を守る帽子、そして補聴器・・・)

 7年ぶりに補聴器を試している。私は20代で難聴となり、数年後に補聴器の装用を始めたが、逆に聞こえにくい場面もあり、少しずつ遠ざけるようになった。英語教員から、アナリストへと転身したタイミングと重なっている。学校は大勢の人に常に話しかけられる職場だ。今は、打ち合わせは少人数だし、自分の作業に集中する時間も長い。

「これ、補聴器です。最先端で、心の声まで聞こえるんですよ」

 補聴器の試用を周囲に伝える際に、こんな軽口を叩きたくなる。相手の戸惑いを軽減させたいという気持ちが働くのだろう。

 7年ぶりにつけてみて、時代は変わったと思う。

 まずはデジタル補聴器の性能だ。私が試しているのは、Widex社のMoment440という最高クラスのもの。以前よりユーザーが必要な音を設定する機能は備わっていたのだが、その精度が格段に高まった感がある。

 初めて付けた日、自転車の後ろに子供を乗せて走りながら、会話ができたことに驚いた。風切り音を自動的に認識し、カットしてくれるのだ。

 iPhoneへの接続機能も新たに備わった。ワイヤレスイヤホンのように電話や音楽を聞くことができる。また、補聴器の音量調節や環境設定をiPhoneから行うことができる。便利だが、注意が必要だ。イヤホンで長時間音楽を聞くことで、難聴のリスクが高まる。難聴が進行するかもしれないし、健聴者が難聴になる可能性がある。世界保健機関(WHO)も世界で11億人が難聴になる可能性があると警告している。(日経,2017 「難聴リスク、若者の耳に迫る 大音量ライブやイヤホン」)

 3つ目は価格だ。両耳で100万円を超えている。5年前のものは、確か両耳装用で50万程度。これでも高いなあと思っていたのに。2018年より医療費控除の対象にはなっているものの、全ての人に控除されるわけないようだ。(補聴器の医療費控除を受けるには? )

 さて、昨日は床屋へ行った。店主はお喋り好きで、いつも話しかけてくれるが、よく聞こえないことが多かった。昨年よりマスクという邪魔者も加わり、ほとんど理解不能だった。聞こえにくさを伝えても、見た目には分からないので、大抵の人はすぐに忘れる。逆に覚えていて、大声で話されるのも実はあまり嬉しくない。仕方がないので寝たふりをするか、適当な相槌で誤魔化すのが常だった。

 しかし、昨日は違う。補聴器を試していることを最初に伝え、つけたままでも大丈夫か、と確認する。私の場合は、バリカンで0.3ミリにしてもらうだけ。シャンプーもないので、大丈夫とのこと。

 思った通り、バリカンが耳元にきても、不快な音量にはならない。店主は常に補聴器が目に入るせいか、あまり話しかけてこない。こちらとしては、どれだけ聞こえるか試したかったのだが。

 実はコロナ以降、床屋に来る頻度を減らし、自分で済ませていたた。感染対策でもあるが、どちらかというと、聞こえの問題を避けるためだ。チーム活動においても、食事が個食となり、会話が制限されたことを、私は密かに歓迎していた。大勢の人がいる場所での会話は、苦手だったからだ。

 補聴器をつければ、すべてが解決するわけではない。どれだけ機能が発達しても、聞こえない声はある。けれど、周囲に分かりやすく伝えることができる。付けているのに聞こえなければ、「こいつ、100万円もするのに使えない!」と補聴器のせいにすればよい。これは気が楽だ。

 とはいえ、実際に購入するかどうかは決めかねている。やはり価格だ。でも、おそらく買っちゃうんだろうな。

 100万円を両耳につけていて、人の話を傾聴しないのは勿体ない。そういう気持ちになれるなら、価値はあるはずだ。そういう姿勢が身に付けば、そのうち、本当に心の声まで聞こえてくるのかもしれない。

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(外側から補聴器⇒マスク⇒メガネ。お風呂では、この順番で外す。順番を間違えるとおかしなことになる)

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