(コラム44-2)健全なる睡眠不足

月と金は横河アトラスターズのアカデミー。平日の残りは、大田区のアカデミー。週末はデフラグビー。

慌ただしい日程だが、以前よりも精神的に余裕が出てきた。1人で何でもやるのではなく、多くのコーチに協力を依頼するようになったからだ。

大田区のアカデミーでは、タグラグビー教室を4ヶ所で開催している。以前は、ラグビー経験者だけで教えていたのだが、昨年途中よりタグラグビーの現役選手にコーチとして来てもらうことにした。「タグラグビーはラグビーの簡易版」と捉えがちだが、本物の選手の動きはラグビー選手とはまるで違う。女性のコーチにも参加してもらっているが、見たこともない動きで、子どもたちの間を走り抜けていく。子どもたちは大いに刺激を受けている。

2年前から手話タグラグビーという教室も運営している。この事業は、スミセイコミュニティースポーツ推進助成プログラムに2年連続で採用されている。

このプログラムでは、手話の講義と、手話を覚えるための運動を交互に行う。「楽しみながら手話を学ぶ」がコンセプト。手話講師には、デフゴルフ選手でもある袖山由美さんや、大田区聴覚障害者協会の民部愛紀さんに来てもらい、運動のパートは私が担当する。

1年目は常にタグラグビーだったが、最近はゲストコーチを招き、ラグビー以外のスポーツを実施している。昨年の5月はデフバスケットボール日本代表の越前由喜選手、12月はデフサッカー日本代表前監督の植松隼人さん、3月にはデフバレーボール日本代表の瀬井達也選手に来てもらう。他競技を指導を見ることは参考になるし、受講者にとっても新鮮な体験となる。

今年の11月には、デフリンピック東京大会が開催される。良い機会なので、さらに多く選手をお呼びしたい。また今後は、企業に出張講義の提案をしたいと考えている。様々な業種で手話の需要は高まっている。この講座は、手話を学ぶだけでなく、運動を通して受講者同士が非言語コミュニケーションで交流するところに特徴がある。社員研修として大いに活用できると考えている。

横河アトラスターズアカデミーでは、最近新しいプロジェクトを女子の日本代表選手と一緒に進めている。地域の保育園児を対象に、英国発祥の運動プログラムの体験会を実施している。おかげで、多くの女子選手と知り合いになることができた。

新しく何かを始めるとなると、必要な手続きは多い。しかし、続けていけば協力者は現れ、時間的な余裕が生まれてくる。

デフラグビーでは前述の通り、専門のコーチに来てもらっている。彼らから学ぶことで私も知識を高めていきたい。

こうしてたくさんの人に協力をお願いするようになったのは、自分の限界を知ったから、という面もある。小学生チームのタグラグビー大会では、私たちのチームは全く勝てなかったし、デフラグビーの南アフリカ遠征では強豪相手に善戦したものの結果を残せなかった。

1人で睡眠時間を削って考え込むよりも、自分より知識のある人に来てもらい、教えを乞う。その準備には時間と手間がかかる。しかし、こちらの方がよほど健全な睡眠不足だと今は考えている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加