脳震盪はいつ起こるか

2019年1月2日、大学選手権準決勝の帝京大学対天理大学において、前半5分帝京のスタンドオフの選手が脳震盪の疑いのため退場し、ゲームに大きな影響を与えたと報道されました。

脳震盪のメカニズムや対処法に関しては、日本ラグビー協会から発信*1されていますが、ゲームのどの状況で発生しているのかに関してはあまり情報がありません。そこで、2つの調査論文をもとに、どうすれば避けられるかを検討していきたいと思います。

70%はタックラー、30%がボールキャリア
1つ目の論文*2は、2013年から2016年における、イングランドプレミアリーグ、プロ12、ワールドカップを対象としたもので、182の脳震盪を調査したところ、脳震盪の70%はタックラー、30%がボールキャリアであったと報告されています。そして、最も多い状況は、タックラーがタックルに向かって加速している時、あるいはタックラーが高速で動いている時。例えば、バックスの選手が、長いパスのレシーバーに向かって加速。キャッチの瞬間に仰向けに倒すことを狙う。賞賛されるタックルですが、直前にボールキャリアが方向転換した際に、反応ができず、頭部を打つリスクが高まります。

逆ヘッドは怪我のリスクが25倍
日本の大学ラグビーを調査対象にした論文*2もあります。2015年、16年の28試合を対象とし、3970回のタックルを調査したところ、8%にあたる317回はタックラーの頭部が間違った側(逆ヘッド:キャリアの進行方向に、タックラーの頭部がある状態)にあった。逆ヘッドタックルにおける頭、首、肩の怪我は69.4/1000の割合で起きており、頭が正しい位置にあった場合の割合(2.7/1000)と比較し、25倍も多いと報告されています。この調査対象は、脳震盪だけでなく、首、肩の怪我も含まれていますが、逆ヘッドタックルは大きなリスクがあることが分かります。

脳震盪は、チーム力を左右するリスク
トップリーグでは、HIA(ヘッド・インジャリー・アセスメント)制度が適応され、脳震盪が疑われる際には、10分間の交代が許可され、診断を受けます。脳震盪が認められれば、その選手は正式に交代。脳震盪の度合いによっては、1週間から4週間出場できません。それが主力選手だった場合、シーズンの成績自体に大きな影響を与えます。

では、どうすればよいのか。
まずは選手、指導者がリスクを認識すること。そして、脳震盪を避けるスキルを高めることが必要です。
スキルとしては、タックラーが頭を下げないこと。下げてしまえば、キャリアの状況が認識できません。次に、加速した状態でタックルに入るのではなく、ショートステップを使って減速し、キャリアの方向転換に対応できるようにする。
タックルのパワーは、スピードと質量の掛け算なので、当然減速しない方が高まります。しかし、これにより4週間の出場停止リスクがあるなら避けるべきでしょう。
かつてスピアタックル(かち上げタックル)が賞賛されましたが、今はキャリアの安全性が優先され、厳罰の対象となっています。同じように、この「加速タックル」も徐々に消えていくだろうと私は考えています。
 

*1日本ラグビーフットボール協会 安全対策マニュアル
https://www.jrfu-coach.com/about1-c216q

*2 Matthew J Cross et el (2017), Tackling concussion in professional rugby union: a case–control study of tackle-based risk factors and recommendations for primary prevention, BJSM Online First, published on October 11, 2017

*3 Shogo Sobue et el (2017), Tackler’s head position relative to the ball carrier is highly correlated with head and neck injuries in rugby, Br J Sports Med: first published as 10.1136/bjsports-2017-098135 on 21 November 2017.

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