『ラグビースキル、整いました』ができるまで(4)

『ラグビースキル、整いました』ができるまで(コラム55-4)

前代未聞のお知らせ。

第1話を無事入稿ができたので、早速第2話の打ち合わせを進めている。第1話は完成まで3ヶ月もかかった。連載のためには制作期間を早める必要がある。第2話のテーマはすでに決まっている。グラウンドパスだ。つまり、地面にあるボールのパス動作である。ラグビーにおいて約半分はこのグラウンドパスであり、これに関する研究を紹介する。問題はテツトが間に合うかどうか。

そんなことを考えていた矢先、編集長より電話が来た。

何か原稿に問題があったのだろうか。

「柴谷さん、実は申し訳ないのだが、連載は今回で終了になりました」

えっ、どういうこと?

「会社の理解が得られませんでした。以前の内容に戻して、編集部で原稿を作ることになりました」

はあ。そう来たかあ。

漫画誌では、人気がなければ即打ち切りというのは聞く。しかし、連載スタート前に打ち切りとは前代未聞だ。制作費が問題となったのだろうか。実は、編集部が最初に提示してきた額よりも制作費は上乗せしてもらった。とはいえ、その額は数万円。制作にかかる時間から考えれば、微々たるものだ。

色々と考えさせられる。出版社は経営が苦しいと言われて久しいが、私の想像以上なのだろう。そもそもこの連載が私に回ってきたのは、コストダウンのためだったのかもしれない。それなのに、私が張り切って新企画で押し切ったので、結果的にこうなったのか。

気づかされた現実。

そうして迎えた6月25日の発売日。即打ち切りということもあり、私は、この原作第1号を誰にも伝えなかった。普段は自分の仕事がメディアに掲載されれば、自身のウェブサイトやSNSで情報発信をするが、あえてしなかった。どれくらいの人が気づくのか試してみたいとも思った。普通の原稿が同誌に掲載されると、いつも数人の知り合いから読みましたよ、という連絡をもらう。漫画の場合、どれくらいの反響があるのだろう。

その結果に驚いた。

私は普段、小学生や中学生にラグビーを指導している。彼らの中には、この雑誌の読者もいるだろう。漫画が掲載していれば、必ず読むはずだ。扉のページに、原作者としては私の名前が出ている。練習へ行くたびに、誰が最初に話題にするか楽しみにしていた。

ところが、いつになっても誰も口にしない。SNSでも全くリアクションなし。その後、1ヶ月経っても、反響は見事にゼロだった。

漫画なら若い読者も読んでくれるはずと考えて企画したのだが、思い違いをしていたのだ。彼らはそもそも紙媒体を読まない。何人かに聞いてみたが、その通りだった。ラグビー情報はYouTubeですね、とのこと。

実に勉強になった。これを活かして次に進もう。まずは新しい媒体を探す必要がある。ちょうどその頃、日本大学スポーツ科学部にて、ラグビー分析について講義をすることになっていた。そこで講義の最後に、この漫画のコピーを配布し、若い読者にアンケートをとってみた。