コミュニケーションの起点を変える
コラム63-1
聴覚障がい者ラグビーチーム「クワイエットタイフーン」のヘッドコーチを引き受けてから、1年8ヶ月になる。その間に行った合宿を数えてみた。
23年11月のフィジー遠征に向けて2回の合宿。24年8月の南ア遠征に向けて4回。24年冬に強化合宿を2回したので合計8回。したがって今回の横浜合宿(2月21日-22日)は9回目となる。この合宿の主な目的は、今年6月に開催が決まったパシフィックデフセブンズ豪州大会に向けての準備だ。
デフラグビーの選手、スタッフは皆平日は仕事をしつつ、夜や休日にトレーニングや合宿の準備をしている。仕事や家庭の事情で、欠席者は常にいる。私も、普段はラグビーアカデミーの運営や指導がメインの仕事なので、デフラグビーに避ける時間は限られている。そのような中で、1人だけ全日程に参加している者がいる。
それは私。
これには理由があって、ヘッドコーチを引き受ける際に、合宿の場所や日程は私に決めさせてもらうことにしたのだ。自分が空いている週末に入れているのだから休むはずがない。開催場所は、東京ガス大森グランド。普段アカデミーで使用させてもらっている場所で、自宅から近い。
しかし今回は、同グランドが工事により使用できないため、明治学院大学戸塚グランドをお借りすることになった。2年前より私が同大学ラグビー部の学生アナリストを指導していることもあり、今回協力をいただけることになった。宿泊施設、ウエイトルーム、食堂がグランドに併設されており、合宿には理想的な環境である。さらに5人の学生が泊まり込みで合宿に帯同してくれた。デフ側に体調不良による不参加が3人もいたので、彼らの帯同無しでは試合形式の練習はできなかった。非常にありがたいサポートだった。
今回の合宿では、他にも変化があった。それは私の心構えに関すること。
まず、現場での指導を専門のコーチに依頼することにした。南アフリカ遠征までは、何でも自分でやろうとしていたが、セブンズに関する知識や指導力不足を痛感。今回は、日本ラグビーフットボール協会セブンズストラテジーアドバイザーの徳永剛コーチに来ていただいた。また、神戸スティーラーズの中村龍SCコーチにも参加してもらい、怪我なく効率よくトレーニングするためのフォームチェックをお願いした。
徳永さんは福岡から、中村さんは大阪から駆けつけてくれた。こんな贅沢な指導体制を整えられるのは、スポンサー企業各社が連盟の活動に協賛してくださっていること、また助成金を獲得できていること、そして私がこっそり頑張っている(?)おかげだ。
今回の合宿準備は3ヶ月前に開始。合宿地と日程を決め、下見をして、スケジュールを調整し、優秀なコーチたちの指導が受けられる環境を整えた。
これってヘッドコーチの仕事なのだろうか。指導を投げているだけじゃないのか。そう感じることもある。ヘッドコーチたるもの人に任せるだけでなく、自分で教えるべきではないのか、と。
いや、デフラグビーに関しては、必ずしもそうではない。むしろ、これこそが私がやるべき仕事なのだ。そう感じる出来事が、今回の合宿であった。