ハーフタイムの笑顔 (HSBC SVNS 2025 バンクーバー大会2日目 ジャパン12-31フランス)

ハーフタイムの笑顔 

コラム67

印象的だったのは、ハーフタイムの両選手の表情だ。フランスの選手たちは皆険しい。そのうちの1人が「アレアレアレ!」と気合を入れている(Allez「アレ!」はフランス語で「さあ、行こう!」「がんばろう!」)。一方、日本の選手は、笑顔で話し合っている。スコアはどうなっているかというと、フランス19、日本7。

リードしているフランス側の表情が厳しいのは、前日に2敗を喫していて、上位トーナメント進出の可能性がないという事情もある。セブンズ女子フランス代表は、パリオリンピックでは銀メダルを獲得した強豪であるが、今大会は若手を多く起用しているせいか、フィジー、英国に連敗した。

一方の日本は、その両国に連勝。この試合に負けても、上位トーナメントに進出できる。この試合は先発を入れ替えて臨んだ。「負けても大丈夫」の笑顔なのか。いや、そうは見えない。

前半からフランスのペースで試合は進んだ。開始早々、フランスはラックにプレッシャーをかけてくる。これはオリンピック前からこのチームの特徴だ。チャンスと見れば、2人、3人と人数をかけてボールを奪いにくる。フランスボールのスクラムとなり、そこから2分間、日本は自陣で過ごす。しかし、ずっと守っているわけではない。ボールを奪い返すと果敢に攻めに転じる。しかし、また奪われる。また奪い返す。攻防に見応えがある。

前日のフィジー戦の前半には、相手のパワーに圧倒され、日本が易々とトライを献上したシーンがあったが、この試合は違う。お互いが力と技を見せ合う、スリリングな展開だ。長身で手足の長い相手に対し、日本は粘って守る。1人が抜かれそうになっても、すぐに次の選手がカバーにくる。

2分間の攻防の末、フランスのシオファニがタックルを外して先制トライ。続く4分には、デュポイが抜け出してトライゾーンへ。これで0-12。対する日本は、ペナルティからの速攻で辻崎がトライを返す。日本のアタックは、小さなスキルの連続が特徴。タックルを受けてからもう一度立ち上がって走ったり、ラックサイドの隙を突いたり。相手ディフェンスの僅かな綻びを逃さず、小さなゲインを繰り返すことで、ラインブレイクを生み出す。これに対してフランスはパワーで押し潰そうとする。

前半ラストプレイ。フランスのアタック。ボールは大きく外に展開される。日本は連携を保ちながら守り続ける。外が無理ならと、フランスはスイッチを使って、内側へ切り込む。そこからオフロード(タックルを受けながらのパス)を3回繋いでトライ。いかに連携が取れた守備であっても、オフロードを3回続けられると守りの人数は足りなくなる。オフロードをさせないビッグタックルが求められる。

7-19でハーフタイムを迎えた。レベルの高い攻防が続いた。日本の選手たちの笑顔は、勝敗のプレッシャーを超えて、試合を楽しんでいる証しなのだろう。

後半、交代出場した大橋聖香が得意のプレイを見せる。センターのポジションに入った大橋が、スタンドオフからのパスをアングルチェンジしながら受けて、ディフェンスのギャップに走り込む。勢いよく上がってくるディフェンスは、急な方向転換に対応できない。相手のディフェンスの特徴を逆手に取ったクレバーなアタック。よし抜けた、と思ったが、笛が鳴る。スローフォワードの判定。

試合終了直前、日本得意のクイックリスタートから、松田がトライ。12-31でノーサイド。フランスが意地を見せる形で、グループリーグが終了。英国が1位、日本が2位で上位トーナメント進出となった。

セブンズはスピーディな展開と選手同士の抜きあいが魅力だが、最近はパワーも重視されている。その中で、細かなスキルで勝ち上がる日本に、観客は大きな声援を送っている。地元の後押しも受けて、サクラセブンズは決勝トーナメントに挑む。

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