ラインブレイク後の攻防
トップリーグプレオフ準決勝、後半20分以降にパナソニックがトライを重ねた。パナソニックのトランジション(攻守の切り替え)の速さが感じられるトライだった。
68分、途中出場のパナソニック福井がラインブレイク。ゴール前でタックルを受けてラックとなる。この時、パナソニック側は2人の選手がラックに入ったが、トヨタは0人。当然ながらクイックボールが出てきて、福岡がトライをあげる。
続く71分。今度は、パナソニック陣深くで、トヨタ10番クロニエがラインの裏に出た後で、タックルを受ける。この時、最初にラックに入ったのは、パナソニック21番の小山、トヨタ側がその後4人入るが、ボールが出てくるまで時間がかかる。結局、パナソニックのディフェンスは整い、トヨタはチャンスを逸する。
その直後、再び福井がラインブレイクすると5番クルーズにパス。クルーズがタックルを受けた直後、パナソニックのサポート2人が入る。トヨタ側はそのラックにコンテストせず、そのままトライを許す。
ラインブレイク後のラックからクイックボールが出てくれば、ディフェンスが崩れているのでトライが生まれやすい。トライの51%はラインブレイクから生まれているほどだ(Diedrick and van Rooyen, 2010)。逆に、そのラックを遅らせれば、トライを防ぐことにつながる。一歩の動き出し、瞬時の判断の遅れが得失点に直結する。
トランジションを「状況の大きな変化」と捉えると、ラインブレイク後の反応の速さもパナソニックの大きな強みと言えるだろう。
ラインブレイクとトライの関係
(表1)
(表1)は、両チームのラインブレイク数とトライ数である。トヨタはブレイクが6、トライが3とちょうど50%だ。一方のパナソニックはラインブレイクの数は14と多いが、トライは5にとどまっており、効率が悪いように見える。
同じ比較を、前半と後半に分けてみた。
すると、後半に大きな差があることが分かる。パナソニックは11のラインブレイクを生み出し、4度のトライにつなげた。相手の動きが鈍くなる後半にこそ、パナソニックの強みは発揮されるのだろう。
固いゲームの中にも一瞬の好機
決勝の相手はサントリーサンゴリアスである。
サントリーは準決勝で、リーグ戦での平均キック数の倍となる40本のキックを蹴って、クボタに快勝した。パナソニックはリーグ戦で平均28本と最もキックを蹴ったチームだ。サントリーがロングキックを蹴ってくれば、蹴り返すだろう。
なお、リーグ戦での平均ラインブレイク数は、サントリー24本、パナソニック14本となっている。
決勝戦は多くの大会で、キックの多い、固い試合となる。それでもハイボールキャッチ、クリーンブレイクの後など、状況が大きく変化する局面が出てくる。
その一瞬の好機をどちらが制するのかに注目したい。