キック数とタックル数の関係 (6N 2019 R3ウェールズvイングランド

 シックスネーションズ第3節、全勝対決となったウェールズvイングランドは、21対13でウェールズが勝利し、3連勝。一方のイングランドは、開幕で優勝候補のアイルランドに快勝、2節ではフランスに大勝、この試合でも67分まではリードを保つが、ここから2トライを奪われました。

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Game stats DF
 この試合のディフェンススタッツです。特徴的な数字が並んでいます。
・イングランドのドミネートタックル(相手を後ろに倒すタックル)30回
・イングランドの総タックル数221回(ミスタックル16含)
 2018年のトップリーグ平均タックル数は149回(ミスタックル26回)ですので、いかに多いかが分かります。
しかし、イングランドのタックル回数が多いのは、この試合に限ったことではなく、過去3試合で平均258回となっています。

キックとタックル数  R3

 キックは基本的にボールを手放す行為なので、キック(横軸)が増えれば、タックル(縦軸)も増えるはずです。
イングランドは、1試合平均でキック37、タックル258(ミスタックル含)とどちらも断トツです。ウェールズは、キック28回でタックル183回とどちらも少ないですが、イングランドと同じ線上にいます。
 図の左上に位置するイタリアとスコットランドは、「キックは少ないのにタックルは多い」チーム。逆にフランスは、「キックは多いがタックルは少ない」。キックをしたがあまり攻められなかったことが示唆されます。つまり、キックを再獲得した、あるいは相手に蹴り返させている回数が多いと考えられます。

 さて、イングランドに話を戻すと、キックとタックルが多い試合を続けていて、最初の2試合は快勝、ウェールズ戦は最後に失速しました。この違いはどこにあるのか。

スクリーンショット 2019-02-09 11.14.09

 こちらは、ゲーム状況とそれぞれの状況で効果的と思われるキックの種類。ラインアウト(横軸)が有利であれば、それが起きやすい長いキックを使うべきであり、スクラムやブレイクダウン(縦軸)が優勢であれば、高いキックを。どちらも不利ならば、どちらも起きにくいショートキックを、という具合です。
 イングランドは、最初の2試合では、裏へのショートキックやロングキックで有利な状況を作ってきました。イングランドの司令塔の選手の判断がよく、相手のディフェンスの薄い部分をついたという要素もありますが、ラインアウトが優勢だったので、相手にキックをさせることで有利な状況をいくつも作ってきました。

 この試合、ウェールズはラインアウトで苦戦しており、3本もミスをしています。一方でスクラムやブレイクダウンでは優勢だったので、試合中盤からロングキックよりもハイボールを多用していました。イングランドはこれまで通り、裏へのショートキックやロングキックで有利な状況を作れたと思うのですが、ウェールズに合わせるかのように、ハーフからのハイボールを繰り返します。しかし、これを悉くキャッチされてディフェンスの時間が増えていったと思います。

キック状況 ウェールズvイングランド

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 タックルは「ラグビーの華」であり、相手を圧倒するようなタックルはチームを鼓舞します。
 しかし、タックル回数が増えすぎると、2つの面で不利になると思います。一つは、タックルミスも増えること。もう一つはペナルティが増えることです。

タックルとエラー
 過去3戦のタックル数とミスタックル数です。
 どんなにドミネートタックルが多くても、タックル数が増えればミスタックルも増えてしまう。実際イングランドは、3連敗のイタリアよりもミスタックルが多くなっている。ゲームの最後に、こうしたミスタックルが失点に繋がってしまうことはよくあります。また、タックルは選手から体力を奪います。疲れてくれば、判断力が鈍ってしまい、効果的なキックが蹴れないということも考えられます。

 ラグビーでは、ペナルティの7割程度がディフェンス側に吹かれます。守りの時間が増えれば、それだけ反則を取られる可能性も高くなります。この試合でも、反則はウェールズ9、イングランド3でした。

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 とはいえ、私の知るエディーさんは、こうしたゲームスタッツが常に頭に入っている人でした。何かの意図があって、こうしたゲームをしているのかもしれません。エディーさんは「数字と論理」に長けていますが、それを超えた部分も大切にするコーチです。

 ラグビーの魅力は、論理を超えたところであり、分析はあくまで隠し味です。

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文中のシックスネーションズに関するスタッツはこちらから。(全てのスタッツが公開されています)。作図は柴谷。

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