(コラム33) 年末の振り返りアンケート

人はモノに愛着を抱くと名前をつけたりするが、私にも愛称で呼ぶ家電が一つある。食洗機の「ミーレちゃん」。

ドイツのミーレ社製。我が家にしては、大変高級な家電と言ってよい。自宅をリノベーションする際の、私の唯一の希望がこれだった。どれくらい高級かと言うと、「これは高級品ですけど、本当に良いですか」と、大工さんに2度も確認されたほどだ。だいたいにおいて節約志向で、いろいろと値段交渉をしてくるのに、食洗機に関しては定価で即決。まあまあ高額な工賃を聞いても涼しい顔。きっと金額を一桁間違えているじゃないか、と彼は疑ったのだろう。

しかし、私は桁数を間違えていないどころか、ミーレちゃんの優秀さにしてみれば安いもんだ、とすら感じていた。その気持ちは今も変わらない。何せ「予洗い不要」なのだ。どんなに汚れた食器でも、ミーレちゃんに任せれば、翌朝にはすっかり綺麗になっている。朝になったらピカピカの食器を棚に戻すだけ。そろそろ5年になるが、その満足感は薄れない。

ただし、そのミーレちゃんにも、稀に汚れを落とし切れないことはある。昨晩もそうだったらしい。汚れが残った鍋を、私がそのまま棚に戻してしまったのを、後で妻に指摘された。

ごめん、次をつけるよ、と平静を装って返すが、心がザワザワとする。

あー、また言われてしまった。

この感覚、何かに似ているなと、少し考えて思い付いた。

保護者アンケートの結果を見る時の感覚だ。

2022年に立ち上げたラグビーアカデミーは3年目。年末年始に、いつもアンケート調査を実施している。運営に関する5段階評価に加えて、改善点などの意見も記入してもらう。忙しい時期にあえてこれをお願いするのは、結果を翌年度の計画に反映させたいから。

ありがたいことに、率直な意見を寄せてくれる方が多い。コーチの言動についての指摘、レッスンの開催場所変更について、など内容さまざま。そして、時に心がザワザワとする。

あー、言われてしまった、と。

ミーレちゃんのように優秀な食洗機でも、食器の形状や汚れの度合いによっては、予洗いをした方が良い。これは5年間の付き合いで少しずつ分かってきた。でも、洗わなかったし、棚に戻す前に確認もしなかった。私が即決購入したミーレちゃんは、完璧なはずなのだ、と。

アカデミーの運営に関しても、指摘を受けたことは、実はうすうす自分でも感じていたことが多い。しかし、そこまでたいしたことはない、とか、何かすべきだが今は忙しい、などと気付かぬふりをしてきた。

自分が立ち上げた団体だから愛着は強い。その気持ちが、気付きを奪ってしまうことがある。このアンケートは、冷静な視点を私に与えてくれる、大変貴重なものだ。

最近は、このアンケート自体に愛着が湧いてきている。今は「年末アンケート」というそっけない名前がついているが、もっと気の利いた相性をつけてあげたい。

改善を繰り返して、皆が居心地の良いクラブにしていきたい。

(鍋の予洗いと汚れの確認もしていきたい)

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