クボタの強さを物語る3つのスタッツ(トップリーグプレイオフ2021 準々決勝プレビュー)

 トップリーグプレイオフ準々決勝で神戸製鋼と対戦するクボタスピアーズ。その強さを、3つのスタッツから紐解いてみたい。

スタッツ1トライレンジの短さ

(表1)

kubota1

(表2)kubota2

 表1はトライ数の比較である。これを見ると、現時点で勝ち進んでいるチームがトップ5に集まっており、チーム力を表しているようだ。表2はトライレンジの比較である。トライレンジとは、トライに至った攻撃がグランドのどの位置から始まったかを示す。表2は、22メートル内を起点としていたトライの割合であり、クボタは58%4番目に多い。その周辺のチームは、すでに敗退しているチームばかり。実力上位チームほどトライレンジが長い傾向がありそうだが、クボタは例外なのだ。

スタッツ2-フェイズの短さ

 では、トライを多く挙げている選手は誰か。

(表3)kubota3

 トップはフッカーのマークス()、2位はバックローのトウパ()、この2人で40%を占めている。トライレンジが短く、フッカーのトライが多いとなれば、ラインアウトモールが多いのだろう、と考えられる。

(表4)kubota4

    しかし、そうとも言えない。表422メートル内のトライの内訳である。ラインアウトを起点としたものは16回あることが分かる。この表にはないが、モールでそのままトライしたものを数えたら6回のみだった。

 表4で注目したいのは、フェイズの短さである。フェイズとは攻撃の回数を表す。クボタの22メートル内起点のトライは、3フェイズ以内が90%以上を占めていることが分かる。

 つまり、大型フォワードが時間をかけてトライをしているのではなく、すばやくスコアをしているのだ。

 クボタはキック数は平均的(1試合18回、リーグ8位)、パスはやや多い(159回、6位)チームだ。中盤では、豪州代表の司令塔フォーリーのもとグランドを広く使って攻めるが、22メートルに入ると、急にテンポアップしてFWが突進を始める。そこに強力なモメンタムがあるのだ。

 スタッツ3 -2番と8番によるクリーンブレイク

 モメンタムとは「勢い」のことであり、ラグビー用語としてよく用いられる。しかし、実際には何を表すのか。ラグビーに関する論文を解説したScience of Rugby(pp. 201-202. Taylor and Francis.)によると、それは質量×スピードであり、モメンタムをゲーム中に高める唯一の方法は、選手がスピードを高めこと、とある。

 大型フォワードのイメージが強いクボタだが、スピードも兼ね備えているのだ。

 ラグビー選手はGPSをつけているが、そのデータは公開はされていない。代わりとなるスタッツとしてClean Break(ディフェンスラインを完全に突破した回数)を参考にする。いくらパワーがあっても、スピードが無ければクリーンブレイクはできないと考えられるからだ。

(表5)kubota5

(表6)kubota6

 表5,6はそれぞれフッカーとバックロー選手のクリーンブレイク数上位5名である。出場時間やキャリー数に違いがあるので単純比較はできないが、クボタはどちらのポジションでも、クリーンブレイク数リーグ1位の選手を有している。彼らはバックスのように50メートルを走ることはできないが、10メートルであれば走り切る。トライレンジが短いのは、彼らの強みを出している結果なのだ。

 こうしたチームを止めるには、防御側が攻撃を上回るモメンタムを持たなくていけない。神戸のディフェンスは激しくなるはずだ。

 今日の一戦では、クボタの22メートル内でのモメンタムを、王者神戸がどう止めるのかに注目したい。

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