(コラム38)分かっちゃいるけど面白い

昨年の大晦日に、5年練用日記の3冊目が終わった。2010年から2024年までの15年間。分厚い3冊に、35歳から49歳までの行動が記録されている。

これまで読み返すことは無かったが、今年50歳になるので良い機会だと思い、少しずつ振り返っている。毎日20分、読み進めている。

覚えていることよりも、忘れていることが多いことに驚く。続きがどうなるのか分からない。小説を読むようだが、それとは少し違う。

このお話の結末は知っているからだ。つまり、今の自分だ。しかし、どういう展開で、今の自分になったのか。記憶を辿っていくうちに、当時の気持ちが少しずつ蘇ってくる。

さて、ここから急にラグビー観戦の話。

結末は分かっているが、展開を楽しみたい。この気持ちは、「リーグワン45分間プレイバック」観戦と同じ。週末の試合を、45分間のハイライトにまとめてくれるJスポーツの番組だ。

配信開始が月曜の夜なので、結果を先に知ってしまうこともある。今日もそうだった。私は基本的に、週末は家族優先、ラグビー視聴は自粛。できれば結果を知らずに試合を見たいので、新聞のスポーツ欄はなるべく見ない。しかし、週明けの今日、学生アナリストたちとミーティング中に、週末の試合結果をこちらにバンバン伝えてくる。

「ああ、言わないでくれ」と昔なら頭を抱えていたが、今は全然問題なし。私には、あの番組がある。

45分という長さが絶妙だ。現在のラグビーのボール・イン・プレイは50%前後。前後半80分なので、ボールが動いている時間は40分。プレイバックでは、45分の間に、メンバー紹介やトライシーンのリプレイなども入るので、ゲームに影響の無いインプレイはカットされているようだ。

TMO(テレビマッチオフィシャル=ビデオ判定)の時間もばっさりカット。実際の試合映像では、反則を判定するための映像や、レフリー間の会話が繰り返し流れるが、編集が上手な人の場合、当該シーンを一度出したら、即レフリーがカードを示す。そうそう、こういう展開が良いのよ、と1人で頷く。

私はよくiPad Proを風呂に持ち込んで、1試合分見てしまう。

映像から伝わってくる興奮に、湯船からの水蒸気が加わり、汗が噴き出てくる。選手同様、水分補給は欠かせない。

試合終了。なるほど、こういう展開だったのか。面白い試合だった、と大満足の45分間。のぼせる手前で風呂をあがる。

さて、話を再び日記に戻す。

15年前の私は独身で、母校の寮の舎監をしながら、英語の授業や高校ラグビー部のコーチをしていた。空いた時間は、朝から晩まで試合映像を見ていた。

環境は変わったが、やっていることは今とそれほど変わらない。寮ではなく、家族とマンションに住み、仕事としてラグビーを教えている。

「45分間プレイバック」のおかげで、今の方が見る試合数は増えているかもしれないが、見ている時間は昔の方が断然長いだろう。一つの試合から、少しでも多くのことを学ぼうとしていたことが、日記の行間から読み取れる。

今は少しその気持ちが薄れてしまっているかもしれない。でも、ラグビーが好きだという気持ちは変わっていない。幸せなことだ、と風呂上がりに思う。

さあ、早く寝よう。そして、早起きしたら、もう1試合見よう。

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