アナリストカンファレンス問答集

アナリストカンファレンス問答集

コラム73

「アナリストカンファレンス」(25年3月8日、日本ラグビーフットボール協会主催)は、無事終了。事後アンケートの結果はまだ届いていないが、大変好評と聞いていて一安心。1年前に比べて、私も楽しむことができました。ウェビナーの場合、講師は参加者の顔が見えない。普段のオンライン会議とは異なり、相手の反応が分からないので前回は話しにくかったのだが、今回は講師同士でおしゃべりをする感覚で進めることができた。参加者からの質問はチャットで届くので、余裕がある際にはそれを読み上げたり、チャットで答えたり。ラジオパーソナリティの気分を味わった。

昨年も参加した知り合い(元アナリスト)からは「質問のレベルが上がりましたね」との感想をもらった。確かにその通り。この場で、それらの質問をいくつか紹介したい。

(質問)プレースキックの成功率が、去年のシーズンと比較して落ちているとのお話がありましたが、その要因として、ショットクロックの導入(トライを与えられてから、60秒以内に蹴らなくてはいけないという新ルール)にあるのではないですか。

(回答)鋭いご指摘です。統計から断定はできませんが、その要因はあると推測されます。

(質問)プロのアナリストはどのようなソフトを使っているのですか。

(回答)リーグワンチームでは、1チームを除いて全チームがスポーツコードというソフトウェアを使っています。またBIツールとして、タブローを使うアナリストが増えています。

(質問)どうやってプロのアナリストになるのですか。

(回答)以前は、元選手がスタッフとして残ってアナリストになる例が多かったですが、最近では大学ラグビー部で学生アナリストとして経験を詰んだ人材が、リーグワンチームにプロとして入団するケースが増えています。その場合、在学中にインターンとして採用された上で、入団することが多いようです。ちなみに私(柴谷)の場合は、各チームに履歴書、職務経歴書を送り、面談を依頼しました。当時、アナリストがいなかった東芝に採用されました。

(質問)小中学生向けのラグビースクールでも、こうした分析をしているチームはありますか。

(回答)私(柴谷)の知る限りではないです。ただし、チームの方針に沿って、単純なスタッツを算出し、選手に示すのは有効だと思います。

(質問)イチローさんが、メジャーリーグの名球界入りをした際の報道で、今の選手は分析に関する情報が多過ぎて、感性が鈍ってしまうとの警鐘を鳴らしていましたが、ラグビー界においてはその傾向はありますか?

(回答)私(柴谷)が経験したことでは、試合前に、選手に情報を与え過ぎてしまうことで、パフォーマンスが落ちることがありました。多くのチームでは、対戦相手や戦術に関する情報は、週の最初の段階で選手に与え、練習を重ねるごとに減らしていくという工夫をしています。なお、イチローさんが言及している野球界における分析は、バッティングやピッチングの技術に関する情報だと思われます。ラグビーにおける分析情報は、技術に関するものは非常に少ないです。なので、当面は野球界のような状況になることはないと思われます。

最後の質問は、難しい問題。野球界では、投球時に肘を何度以上あげると、故障の確率が何%上がるというところまで研究が進んでいる。ラグビーでは、そこまでの情報はまだない。ただし、こうしたスキルに関する分析は、私が大学院で研究した分野であり、測定技術の進歩とともに、今後ラグビー界にも確実に広まっていく。どのように付き合っていくべきなのか、各チームが試行錯誤をしていくことになると思う。アナリストカンファレンスでも、いずれこちらの分析を取り上げるのも良いかもしれない。

皆さん、また次回、お会いしましょう。(私にまた声がかかるか分かりませんが)