デフラグビー・パシフィック・リム(25年6月 )を終えて

ビーチで国家

(大会初日の朝。ゴールドコーストのビーチで手話での国家斉唱の練習。撮影:長田耕治)

6/28-29の2日間、オーストラリア・ゴールドコーストにて開催されたデフラグビー・パシフィック・リム・セブンズに参加し、翌日帰国しました。出国したのが6月26日。わずか5日間でしたが、中身の濃いツアーとなりました。

参加国は、オーストラリア、フィジー、サモア、日本の4カ国。オーストラリアとは1年前に南アフリカでも対戦して敗れています。フィジーとは2年前に日本が遠征して1勝1敗。サモアとは、今回が初対戦でした。

大会は初日に3試合、2日目に3試合とプレイオフが行われました。結果は2勝5敗。目標とした優勝には届きませんでした。挙げた2勝はいずれもサモア戦で、オーストラリア、フィジーには勝てずに終わりました。

今回の遠征の目的は、初の日本開催となるデフラグビーセブンズ世界大会(26年11月)に向けての強化です。選手12名(実際には出発前日の体調不良で11名)のうち、国際大会初参加が3名でした。24年の南アフリカ遠征は選手9名でしたので、選手数の増加は良い傾向です。

ただし、初日に3人が怪我、2日目にもう1名が怪我となり、最終戦はリザーブなしでの戦いとなりました。他チームは、14人程度の選手を連れてきており(セブンスではチーム登録は12人ですが、怪我人が出れば、バックアップメンバーと入れ替えることができます)、選手不足は、引き続き日本の大きな課題です。また、怪我の多さは、トレーニング不足によるものなのか、あるいはタイトな遠征スケジュールによるものなのか、を今後検証する必要があります。

試合前の整列

(試合前の整列。会場は、サーファーズ・パラダイス・クラブのグランド。撮影:長田耕治)

一方で、成果も多くありました。最終戦を戦ったメンバーは、最後まで勝利を目指して奮闘しました。今回の遠征では、「自立」をテーマの一つとしました。選手数が増え、帯同するスタッフ数はその分減りました。遠征では選手が自ら行動し、グランド外でも仕事をする必要があります。怪我をしたメンバーも含め、全員がチームのために行動してくれました。

最近知ったのですが、組織全体の意識を高めるための第一歩は「関係の質」の向上なのだそうです。「組織の成功循環モデル」として、MIT元教授のダニエル・キム氏が提唱している考えです。それによると、相互理解が得られ、信頼関係が培われていること、率直なコミュニケーションや意見交換がなされていること、躊躇なく自己開示が行われ、相手の成長を促すためのポジティブ・フィードバックがなされている、などが「関係の質」を高めた言動です。(「こうして社員は、やる気を失っていく」 松岡保昌著 日本実業出版社 P123より抜粋)

この「関係の質」が、次に「思考の質」に結びつき、さらに「行動の質」、そして「結果の質」が高まると説明されています。2年前のチーム発足時に「世界一コミュニケーションが取れるチームとして、世界大会で優勝する」という目標を掲げました。これは、他の強豪国に散見されるような難聴者とろう者の間のコミュニケーション不足を許すことなく、チーム強化と情報保障を両立させる取り組みです。

チーム内のコミュニケーションは手話が原則であり、チーム活動時には選手やスタッフがお互いを知るための機会を多く作ってきました。今では、合宿や遠征の際、声をかけずとも、チーム全員がホテルのロビーなどに自然に集まり、会話を続けているのをよく見かけます。この方針に反するような事例があれば、連盟の理事、ヘッドコーチである私に対して選手から異議が発せられます。この様子を見ていたトレーナーの1人は、「風通しの良い組織だと感じた」と言っていました。

先ほどの「組織の成功循環モデル」に倣えば、今のチームは「関係の質」が向上していると言えます。今回の遠征では、次のステップである「思考の質」や「行動の質」の高まりが感じられました。1年3ヶ月後の世界大会にて、「結果の質」を求めるための光が見えて来ました。

本遠征の実現に向けて、ご支援いただいたスポンサーの皆様、サポーターの皆様に感謝いたします。

なお、上記のような、デフラグビーの取り組み、そして、コミュニケーションの工夫などを、8月9日に品川区ラグビー協会のセミナーにて、ご紹介することとなりました。 興味のある方は、ご参加いただけますと幸いです。

SRU第20回セミナー「デフラグビーに学ぶ、きくチカラ」
~2026年に東京で国際大会開催!「世界一の連携」の作り方~

https://sru.or.jp/eventinfo/sru20/

試合後の円陣

(試合間の選手によるミーティング。思考の質、行動の質の高まりを感じた。撮影:長田耕治)

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