大田区内の小学校で講演「文武両道プラス」

大田区内の小学校で、保護者向けに講演をする機会をいただきました。

「体育・健康教育授業地区公開講座」の一環とのことで、体育がテーマ。そこで、以前より気になっていたことをお話しさせていただきました。その一部をスライドを用いて、ご紹介します。

 教育課題1

(左)教育に関する報道で、この数ヶ月で目立つのは「部活動の地域移行」や「教員の働き方改革」。これまで、ほぼ無償で実施されてきた、学校での部活動が地域に展開されることで、中学生の運動機会が制限されることが懸念される。

(右)コロナの影響を受け、小中学生の体力テストの数値は大きく落ち込んだ。特に小学生、中学生女子が顕著。

教育課題2

 こちらも気になる報道。「理科嫌い・理科離れ」という言葉が日本の教育界に登場したのは1980年代後半だが、この課題も解消されていないようだ。

 私自身もずっと理系嫌いで、大学卒業までいわゆる「文系」。その後コーチングでの必要性からデータサイエンスや力学を学び始めたところ、高校物理の初歩的な力学の知識のおかげで、20年間抱いてきたパスのフォームに関する疑問が解消するという経験をした。中高生時代に自分が最も興味のあったもの(ラグビー)にも、物理がこれほど役立つのだと、当時知っていたら、競技力は上がっただろうし、理数系にも強い興味を持てただろう。同じような環境の中高生は、今もいるのではないか。

教育課題3

 私見ながら、現在の東京都内での小学生の状況を表したもの。中学受験に向けて塾へ通い始めるのが、小学3年生くらい。この時点で、残りの小学校生活を受験重視で行くのかどうかの選択を迫られる。

発達発育過程

 ただし、受験勉強を否定している訳ではない。懸念は、塾に通うことで、ただでさえ不足していると思われる運動の機会がさらに減ってしまうこと。上の表は、子どもの発達段階を表したもの。小学生の時期というのは、多くの体力的要素が伸びる時期に当たっているのがわかる。

文武両道

(左)は「文武両道」のイメージ。両方の道で前進するのだけど、交わることはない。また、どちらかというと「文」が主で、「武」は「文」を促進するためにある、というのが多くの人の考えではないか。

(右)は新しい「文武両道」のイメージ。どちらも頻繁に交わりながら成長していく。

ベクトルの分解2

ベクトルの分解

 新しい文武両道の実現のために、こんな取り組みを考えている。例えば、ラグビーのパスの軌道が、真っ直ぐな選手(上)と山なりになってしまう選手(下)がいる。

 動作的には、投げる前の右肘の位置に違いがある。これを修正することで、選手がボールに加える力の向きに変化を加えることができる。ただし、コーチがこれを言葉で伝えるだけでは、体に染み付いたフォームを変えるのは難しい。

 そこで、力学を用いて説明する。「君たちが、教室で学んだベクトルの分解と同じことだ。肘が伸びていることで、cosθ分だけ力が失われている」

文武両道プラス

 こうした取り組みは、先ほど挙げた教育課題の解消につながるのではないか。運動とサイエンスを結びつけることで、運動習慣と科学への強い興味を与えることができる。

 また、運動が脳が活性化されることは、科学的に証明されている(この点は講演の前半で説明)ので、塾も学習の前に有酸素運動を取り入れることは必須だと思われる。すると、現在のスポーツ教室と学習塾との境界線は曖昧になり、事業所数で5万を超える学習塾(平成28年経済センサス活動調査)が部活動の舞台ともなり得る。教員の働き方改革や部活動の地域展開にも貢献できそうだ。

 私のラグビーアカデミーでも将来的にこのような活動をしていきたい。

千鳥小講演2

 講演中の様子。参加者のお父様に、パスの実践をお願いしました。

 皆様、ありがとうございました。

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