明日11月25日発売のラグビーマガジン2022年1月号に「大敗は偶然か、必然か」という記事を書いています。
5対60で大敗した先日のアイルランド戦に関して、7月のアイルランド戦や10月のオーストラリアと比較して、ここまでの差がついた要因を分析しています。大まかなポイントは以下の通り。
・この2年で3試合しかテストマッチを経験しておらず、経験不足は否めない
・7月に31対39と接戦したアイルランドは、主力のいない別のチームだった
・ジャパンは、2019年のワールドカップと比較して、平均失点が倍増している
・7月の対戦では、ジャパンのハイボールキャッチは安定していたが、11月は不安定になった(主なレシーバーが、7月はフィフィタ、マシレワだったが、11月は松島、田村)
·7月の対戦で大活躍したフィフィタの強みを出させず、弱みを突いてきた
(これらのことを10点以上のチャートを用いて細かく述べています。どれだけ細かいかというと、校正をしていて自分が嫌になるほど。普通の雑誌では考えられないくらいに文字と図版が詰め込まれていて「これじゃあ読みにくいでしょ」と私は思うのだけれど、田村編集長いわく「ラグマガを買う人は熱心だから、これくらいでちょうどよい。細かいほど1000円分の元が取れたと喜んでくれる」らしい。実際はどうなんでしょうね?)
ハイボールを蹴らなかったスコットランド
この記事は、ポルトガル戦前に書いたものなので、その後の2戦に関しては、考慮されていません。そこで、スコットランド戦はどうだったのかを振り返ってみたい。
上の図は、スコットランドのコンテストキックの種類とその結末を表したもの(柴谷集計)。コンテストキックとはボールの再獲得を目指すキックのことで、ディフェンスの裏に上げるショートパントや、高く蹴り上げるハイボールなどがある。
11月のアイルランドは、このハイボールを松島、田村を主なターゲットに8本蹴ってきて、半分以上を再獲得した。
一方のスコットランドは、ハイボールは3本のみ。その代わり、ショートパント2本、長めのグラバーを1本を蹴ってきた。その結果、ハイボールではジャパンは全てキャッチエラーしたが、短いコンテストでは、ジャパンが再獲得に成功、グラバーも含め、すべてカウンターアタックを仕掛け、いずれもスコットランドの反則を奪っている。
私の感想は次の通り。
・試合の序盤からジャパンの意思が見事に統一されていた。キックオフからの17フェイズのアタックから分かるように攻める時間を増やそうとしていた。相手の短いコンテストに対して、12番中村や11番フィフィタが素早く反応し、攻めに転じたのもこの意思統一があったからだろう。
・スコットランドは相手の弱みを突くよりも、自分たちの強いところで戦いたいチームなのか?あるいは、ただの10番の好み?(6点差で勝っている78分に、PGではなく、攻めたがっていたところを見るとそんな気がする)
面白い試合の条件とは?
ラグビーの「面白い試合」の条件は、全ての局面で力が拮抗していることだと、私は考えています。(スクラムで完全に負けているのに、なぜか勝ってしまったみたいな試合は、見ていてスッキリしない)
この試合がまさにその「面白い試合」でした。アウェイの地で、こうした勝負を見せてくれる今の代表は、本当に強いなと改めて感じた一戦でした。
(スコットランドと日本のスタッツ。トライ数にこそ差はあるが、その分、ジャパンはペナルティで差を詰めていった。その他の要素は拮抗している)