アナリストセミナーは面白い!1 2025リーグワンアナリストによるオンラインセミナー

アナリストセミナーは面白い!1

コラム70-1

3月5日水曜日の夜、2025リーグワンアナリストによるオンラインセミナーを開催した。これは、私が主催する学生アナリストサポートプログラム「ABCラグビー分析」のイベントである。会場は、渋谷スクランブルスクエアの某オフィス。キヤノンイーグルスのアナリスト、荻田晃大氏をお迎えして、「私がプロのアナリストを目指した理由」というタイトルで話をしてもらった。

参加者は40人。半分以上が大学ラグビー部の学生アナリスト、高校チームのアナリストは8名参加。これほど多くのアナリストが集まるとは思っていなかった。

まずは私がご挨拶。このプログラムを始める経緯を説明した。私がアナリストの時、多くの学生アナリストは、プロの道には進まなかった。大変な作業ばかりで、社会人になってまだやりたくないという声も聞いた。しかし、プロの現場は人が足りていない。このミスマッチを解消しなくてはと考えたのだ。

続いてセミナーの本編は、荻田さんの自己紹介から始まった。荻田さんは東京都出身。小学生時代、お父様の仕事の関係でタイに住んでいた。帰国後に入学した成蹊中学にてラグビー部に入る。しかし、成蹊高校ではラグビー部には入らず、生徒会や東日本大震災被災者へのボランティア活動などをして過ごした。大学は慶應義塾大学経済学部へ。当時はコロナ禍で、何をすれば良いのか分からない状況。その中で先輩から声がかかる。

「ラグビー部に来ないか。選手以外にもスタッフとして活動できるよ」。これが転機となった。高校時代から写真が好きで、ラグビー部の試合を撮ることもあった。PCを使うのも得意だった。ラグビー部にスタッフとして入ると、アナリストを選ぶのは自然な流れだった。

学生アナリストとして2シーズンを過ごした後に、もう一つの転機がやってくる。その頃、外の世界を見てみたいと思うようになった。プロチームのアナリストは、どのように仕事をしているのだろうか。大学のコーチを通じてインターンの受け入れ先を探してもらったところ、リーグワンの強豪サントリーサンゴリアスが受け入れてくれることになった。

当時のサンゴリアスには、須藤惇氏がヘッドアナリストとして所属していた(現在は、15人制男子日本代表のヘッドアナリスト)。インターンの仕事は、練習の撮影など簡単な内容だったが、練習の合間に、分析に関する質問をすると、須藤氏は何でも教えてくれた。業務で失敗をすることもあったが、その時は厳しく指導もしてくれた。インターンと大学ラグビー部の両立生活を続けていたところ、大学の監督から呼び出され、キヤノンイーグルスからプロのアナリストとして採用の打診があると知らされた。同チームのアシスタントアナリストに空きが出て、須藤氏の紹介もあって、このような話となったようだった。すぐには決断できず、須藤氏に相談したところ、次のような言葉をもらった。

「(自分の決断を)正解にできるかどうかは自分次第」

自分がどのくらいこの世界で通用するのか試してみよう。そういう思いで、プロになる決断をした。今思うと、中学での選手経験や、高校時代の写真との付き合い、大学でラグビー部に誘われ、インターンを通してプロになるなど、すべてのことが繋がっていたように感じている。

と、ここまでが第1部。荻田さんは、こうしたセミナーは初めてと言っていたが、そうは思えない落ち着きぶり。口調も穏やかで、分かりやすい。参加者に質問を募ると、早速、大学生アナリストから挙手があった。

「アナリストとして成長していくために、どのように目標設定をしていますか」

選手の場合は、設定された数値があったり、課題のスキルを伸ばすことなど目標を設定しやすいが、アナリストの場合はそう単純ではない。荻田さんの答えは以下のような内容だった。

アナリストの仕事は成果が見えにくいもの。目標設定もやりづらい。インターン時代に学んだことだが、「選手がどれだけ成長できたか」を自分の成果とするのが良いう。学生アナリスト時代には、そうした視点はなかった。自分の業務ができればそれでOKという心境だったが、それだけでは足りないということをプロの世界で学んだ。

(第2部へ続く)